30代の理学療法士になると、20代の頃とは違ったキャリアの悩みを感じるようになります。
新人の頃は、目の前の患者さんに一生懸命向き合い、勉強して、技術を身につけることが成長そのものでした。
しかし30代になると、ある程度の臨床経験を積み、後輩指導やチーム運営を任されるようになります。
仕事はできるようになった。
患者さんからも信頼されるようになった。
それなのに、「自分の市場価値は、本当に上がっているのだろうか?」そんな疑問を持つことがあります。
私自身、理学療法士として14年間、病院で働いてきました。
そして30代になってから、「技術や経験を積み上げるだけでは、これからのキャリアは十分ではない」と考えるようになりました。
そこで私は、本業を辞めるのではなく、2024年から副業として整体業を始めました。
この記事では、30代の理学療法士がキャリアを考えるときに知っておきたい、
✅30代の理学療法士が感じやすいキャリアの壁
✅給料が上がりにくい理由
✅転職・昇進・専門性・副業という選択肢
✅「病院内の評価」と「人材価値」の違い
✅30代から人材価値を高める具体的な方法
✅私が副業整体を始めた理由
について、14年目の理学療法士としての経験を交えながら解説します。
30代の理学療法士が「このままでいいのか」と感じる理由
30代になると、理学療法士としての仕事にはかなり慣れてきます。
新人の頃は一つひとつ調べなければ対応できなかった症例も、経験を積むことである程度判断できるようになります。
後輩の指導を任されたり、チームの中心として働いたりする人も増えてくるでしょう。
一方で、仕事に慣れたからこそ見えてくるものがあります。
それが、「この先、何を目指せばいいのだろう?」という問題です。
20代では、「もっと知識を増やしたい」「もっと技術を身につけたい」という目標を持ちやすい。
しかし30代になると、「技術を身につけた先に何があるのか?」という疑問が出てきます。
特に、
という状況になると、キャリアについて考える機会が増えてきます。
これは「理学療法士を辞めたい」という気持ちとは、少し違います。
むしろ、「理学療法士として積み上げてきたものを、この先どう活かせばいいのか?」という悩みなのではないでしょうか。
理学療法士30代の年収はどのくらい?
キャリアを考えるうえで、収入は避けて通れない問題です。
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」を加工した職業情報提供サイト(job tag)によると、理学療法士の職種データとして示されている年収は443.6万円、平均年齢は36.2歳です。
ただし、このデータは「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士」の職種区分によるものなので、理学療法士だけの平均年収ではありません。
重要なのは、平均年収の数字そのものより、「30代になったら、経験に応じて大きく収入が伸びるとは限らない」という点です。
理学療法士の給与は勤務先の給与体系や役職、経験年数などによって決まるため、「臨床技術が10上がったから給料も10上がる」という単純な仕組みではありません。
だからこそ30代では、「どうすれば今の職場で評価されるか」だけでなく、「自分の経験そのものにどんな価値があるのか」を考えることが重要になります。
30代の理学療法士が考えたい5つのキャリア選択肢
30代になったからといって、転職しなければいけないわけではありません。
キャリアにはいくつもの選択肢があります。
大きく分けると、次の5つです。

①今の職場で専門性を高める
②管理職・マネジメントを目指す
③転職して環境を変える
④理学療法士の経験を別の領域で活かす
⑤副業で病院の外に自分の価値を作る
大切なのは、
「どれが正解か」ではなく、「自分は何を得たいのか」から逆算することです。
① 今の職場で専門性を高める
まず考えられるのが、現在の職場で専門性を高める方法です。
特定の疾患や領域を深く学び、
など、自分の専門性を明確にしていきます。
今の職場に不満がなく、患者さんへの臨床そのものにやりがいを感じているなら、この方向性は十分考えられます。
ただし注意したいのは、「専門性を高めること」と「収入が増えること」は必ずしも同じではないということです。
資格を取得したり、勉強を続けたりすることが、自分の成長につながっているのか。
それとも、「資格を取れば給料が上がるはず」という期待だけになっていないか。
ここは一度整理しておきたいところです。
② 管理職・マネジメントを目指す
30代になると、主任やリーダーなどの役割を任される人も増えてきます。
その先には、リハビリテーション部門の管理職などの道があります。
管理職になれば、臨床能力だけではなく、
などが求められます。
管理職を目指すこと自体は、一つのキャリアです。
ただし、「給料を上げるためだけに管理職になる」という選択には注意が必要です。
管理職になると責任や業務内容も変わります。
「自分は臨床を続けたいのか、それとも組織運営に関わりたいのか」を考えておくことが大切です。
③ 転職して環境を変える
30代の理学療法士にとって、転職も重要な選択肢です。
例えば、
など、環境を変えることで仕事内容や給与、働き方が変わる可能性があります。
ただし、「今の病院が嫌だから転職する」だけでは、次の職場でも同じ悩みを抱える可能性があります。
転職する前に、「何を変えたいのか?」を明確にしておきましょう。
例えば、
給料を上げたい
→ 給与体系・昇給・賞与・手当を確認する
臨床技術を高めたい
→ 症例・教育体制・専門領域を確認する
働く時間を変えたい
→ 勤務時間・休日・残業を確認する
管理職を目指したい
→ キャリアパスや役職制度を確認する
というように、目的から転職先を選ぶことが重要です。
④ 理学療法士の経験を別の領域で活かす
理学療法士のキャリアは、病院だけではありません。
これまで培ってきた、
などは、別の仕事でも活かせる可能性があります。
例えば、
などです。
ここで大切なのは、「理学療法士の資格そのもの」だけを自分の価値にしないこと。
30代になると、「理学療法士だから何ができるのか?」から、「理学療法士として何を経験し、何ができる人なのか?」へ視点を変える必要があります。
⑤ 副業で病院の外に「自分の価値」を作る
そして、私が30代になってから選んだのが副業です。
私は理学療法士として病院で働きながら、2024年6月に副業として整体業を始めました。
なぜ転職や独立ではなく、副業だったのか。
理由はシンプルです。
本業を辞めるほどのリスクを取らずに、自分の経験が病院の外でも通用するのか試してみたかったからです。
病院に勤務していると、「患者さんから感謝される」「技術を評価してもらえる」という経験はあります。
しかし、それが病院の外でどれだけ価値になるのかは分かりません。
そこで私は、副業という小さな形で試してみることにしました。
副業を始めると、
という、病院勤務だけでは経験しにくい仕事にも向き合うことになります。
その過程で、「自分には何ができるのか」を改めて考えるようになりました。
30代で意識したい「人材価値」とは?

30代のキャリアを考えるうえで参考になる考え方の一つが、経済評論家の山崎元さんが提唱していた「人材価値」です。
山崎さんは、人材価値を大きく分けると、「ある仕事ができるという能力」と「その能力を実際の仕事で使った実績」によって評価されると説明しています。
つまり、資格や知識を持っているだけではなく、それを仕事の中で使い、どのような経験や成果を積んできたのかが重要ということです。
これは理学療法士にも当てはめて考えられるのではないでしょうか。
例えば、「脳卒中のリハビリについて勉強しています」だけではなく、「脳卒中患者を何人も担当し、動作分析や装具の選定、家屋評価まで経験してきた」となれば、自分の能力を具体的に説明できます。
さらに大切なのは、その能力が今の病院の中だけで評価されるものなのか、それとも職場が変わっても価値を持つものなのかという視点です。
30代では、院内で評価されることだけを目標にするのではなく、「自分は何ができて、それをどこで役立てられるのか」まで考えてみることが、人材価値を高めることにつながります。
しかし「病院での評価」と「人材価値」は同じではない
ここで、30代の理学療法士に考えてほしいのが、「病院での評価」と「人材価値」は同じなのか?ということです。
例えば、病院で評価されるためには、業務を正確にこなす、チームに貢献する、後輩を指導する、委員会活動を行う、管理業務を担うといった能力が求められます。これらは組織で働くうえで、とても重要な能力です。
一方、病院の外で仕事をする場合には、少し違った視点も必要になります。
といった視点です。
つまり、病院の中で評価される能力と、職場が変わっても価値を持つ能力には、重なる部分もありますが、完全に同じではありません。
だからこそ30代では、院内で評価されることだけを目標にするのではなく、「自分は何ができ、それを病院の外でもどう活かせるのか」を考えておくことが大切です。
30代から「人材価値」を高める5つの方法

では、30代の理学療法士が、これまでの経験を「人材価値」に変えていくには、具体的に何をすればいいのでしょうか。
私は、次の5つを意識することが大切だと考えています。
① 自分の得意分野を言語化する
まず取り組みたいのが、「自分は何が得意なのか?」を言葉にすることです。
「理学療法士として10年働いています」だけでは、自分の強みが相手に伝わりません。
例えば、
など、具体的に説明できるようにしてみましょう。
さらに、「なぜそれが得意なのか」「どのような患者さんを多く担当してきたのか」まで整理すると、自分の経験が強みとして見えてきます。
「理学療法士です」から、「○○ができる理学療法士です」へ。
この違いを明確にすることが、人材価値を考える第一歩です。
② 臨床経験を「実績」に変える
次に大切なのが、これまでの臨床経験を「実績」として整理することです。
例えば、「回復期病棟で10年間働いた」という経験があるなら、そこからさらに掘り下げてみます。
など、具体的な経験を書き出してみましょう。
もちろん、すべてを数字で表せるわけではありません。
大切なのは、「どこで、誰に、どんな仕事をして、何を身につけたのか」を説明できることです。
経験をただの「勤務年数」で終わらせず、具体的な経験や成果として整理することで、自分の強みを他者にも伝えやすくなります。
③ 病院以外でも通用するスキルを身につける
30代になったら、臨床能力だけでなく、病院の外でも活用できるスキルにも目を向けてみましょう。
例えば、
などです。
これらは一見すると理学療法とは関係がないように感じるかもしれません。
しかし、病院の外では、専門知識だけで仕事が成立するとは限りません。
といった能力も必要になります。
臨床経験にこうしたスキルを組み合わせることで、将来の転職や副業、独立など、働き方の選択肢を広げることにつながります。
④ 小さく外の世界に出てみる
人材価値を高めるためには、病院の中だけで経験を積み続けるのではなく、小さく外の世界に出てみることも重要です。
例えば、
など、方法はさまざまです。
いきなり転職や独立をする必要はありません。
外に出てみると、病院の中では当たり前だと思っていた自分の経験が、別の場所では価値として受け取られることがあります。
反対に、「思っていたより自分の経験を説明できない」と気づくこともあるでしょう。
外の世界を知ること自体が、自分の人材価値を確認する機会になります。
⑤ 本業を辞める前に「選択肢」を作る
最後に意識したいのが、「辞めるか、残るか」の二択にしないことです。
30代では、今の職場に不満があったとしても、いきなり退職する必要はありません。
など、少しずつ選択肢を増やしていきましょう。
例えば、本業の収入が年間400万円あるとしても、副業で年間30万円、50万円といった収入を得られるようになれば、働き方を考える際の選択肢は変わってきます。
もちろん、副業収入だけを目標にする必要はありません。
大切なのは、「今の職場を辞めないと何も変えられない」という状態から抜け出すことです。
30代のうちに複数の選択肢を持っておけば、40代、50代になったときにも、自分に合った働き方を選びやすくなります。
私が30代で副業整体を始めた理由
私自身も、30代になってキャリアについて考えるようになりました。
理学療法士として14年間働く中で、積極的に臨床技術を高めていきました。
そうしていくと「この技術を、もっと役立てることはできないだろうか?」という疑問が出てきました。
だからといって、すぐに病院を辞めたいわけではありませんでした。
家族もいます。
生活もあります。
いきなり独立するリスクを取るつもりもありませんでした。
そこで選んだのが、「本業を続けながら、副業として整体を始める」という方法でした。
2024年6月に副業整体を始め、現在も病院勤務と並行して続けています。
副業を始めたことで、収入だけではなく、「自分の技術を必要としてくれる人がいる」という感覚を持てるようになりました。
また、接客や集客、価格設定、事業運営など、病院勤務だけでは経験できなかったことも学べました。
副業整体は、私にとって単なる「収入を増やす手段」ではなく、「理学療法士としての経験を、病院の外でも活かせるか試す場」になっています。
30代の理学療法士は「辞めるか、残るか」の二択ではない
30代になると、「このまま病院に残る」か、「理学療法士を辞める」か、という二択で考えてしまうことがあります。
しかし、本当はもっと多くの選択肢があります。

・今の病院で専門性を高める→管理職を目指す
・転職する→ 違う環境で経験を積む
・別領域へ進む→ 企業・介護・福祉・ヘルスケアなど
・副業を始める→ 病院の外でも経験を積む
・複数の選択肢を組み合わせる→ 自分なりのキャリアを作る
重要なのは、「今すぐ人生を大きく変えること」ではありません。
むしろ30代では、「40代になったときに選べる道を増やしておくこと」が重要なのではないでしょうか。
30代から始めるなら、まず何をすればいい?

ここまで読んで、「じゃあ、自分は何から始めればいいの?」と思った方もいるでしょう。
私なら、次の順番で考えます。
ステップ1 今の不満を書き出す
まずは、「今の仕事で何が不満なのか?」を整理してみましょう。
給料、人間関係、勤務時間、臨床内容、評価制度、将来性など、気になることを書き出します。
原因を曖昧にしたまま転職すると、環境が変わっても同じ悩みを繰り返す可能性があります。
まずは不満の正体を知ることが、キャリアを考える第一歩です。
ステップ2 10年後の働き方を考える
次に、40代になった自分をイメージしてみます。
など、10年後の働き方を具体的に考えてみましょう。
今の職場を基準にするのではなく、将来から逆算することが大切です。
ステップ3 今の自分に足りないものを確認する
10年後の働き方をイメージすると、今の自分に足りないものも見えてきます。
などかもしれません。
「足りないもの=転職」と決めつけず、何を身につければ将来の選択肢が増えるのかを考えてみましょう。
ステップ4 小さく行動する
最後は、考えるだけで終わらせず、小さな行動に移します。
など、できることから始めてみましょう。
いきなり退職や転職を決める必要はありません。
小さく試しながら、自分に合う方向を探していくことが大切です。
30代のキャリアで「副業」を選ぶときの注意点
副業は魅力的に見える一方で、誰にでも向いているわけではありません。
始める前に、
などを確認する必要があります。
特に理学療法士が整体などの仕事を行う場合は、「理学療法士として行う業務」と「副業として行う整体」を混同しないことが重要です。
資格や業務内容、広告表現などについても事前に確認しておきましょう。
副業整体について詳しく知りたい方は、こちらの記事で整理しています。
▶ 関連記事:理学療法士は整体を副業にできる?|資格・施術内容・法律・注意点を徹底解説
30代の理学療法士にとって「人材価値」とは何か
ここまで読んでいただいた方に、最後に一つ伝えたいことがあります。
30代になったら、「自分は病院でどれだけ評価されているか」だけで、自分の価値を決めないでほしいと思っています。
病院で評価されることはもちろん大切です。
しかし、それだけが理学療法士の価値ではありません。
こうしたものを組み合わせれば、「自分だからできること」が少しずつ見えてきます。
そして、それを病院の外でも使える形にできれば、「今の職場に評価されなければ、自分には価値がない」という状態から抜け出すことができます。
まとめ|30代の理学療法士は「辞める前に選択肢を増やす」
理学療法士30代のキャリアについて考えるとき、必ずしも「転職する」「病院を辞める」という結論を出す必要はありません。
まず考えてほしいのは、「この先、自分はどんな働き方をしたいのか?」ということです。
30代には、
など、さまざまな選択肢があります。
そして私は、「病院を辞める前に、病院の外でも自分の価値を作ってみる」という考え方も、一つの方法だと思っています。
私自身はその方法として副業整体を選びました。
本業を続けながら、小さく始める。
実際に人にサービスを提供する。
お金をいただく。
自分の経験が病院の外でも価値になることを確認する。
そうした経験が、40代以降のキャリアを考える材料にもなっています。
30代のキャリアで大切なのは、「今の仕事を辞めること」ではなく、「将来の選択肢を増やすこと」。
病院勤務を続けながらでも、できることはあります。
そして、その小さな一歩が、10年後の自分の働き方を変えるかもしれません。
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20代では「どんな職場・仕事を選ぶか」が重要になります。
30代以降のキャリアを考える前に、自分がどんな理学療法士になりたいのかを整理しておきましょう。
▶関連記事:理学療法士20代のキャリアはどう考える?転職・給料・専門性から考える後悔しない働き方
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副業整体に興味を持った方へ。勤務先の確認から開業、集客、収支、実際の施術まで、私自身の経験をもとに全体像をまとめています。



「30代になって、このまま理学療法士を続けていていいのだろうか?」
「経験は増えたのに、給料が思ったほど上がらない」
「転職した方がいいのか、それとも今の病院に残るべきなのか分からない」