先日も、膝の手術を終えたばかりの患者様のリハビリを担当しました。
「膝が痛くて2年くらい通院してたけど、どうにもならなくて手術したんだ」
「2年間は膝の水を抜くか、痛み止めの薬と湿布で耐えたよ。結局手術になっちゃった」
「医者からは年だからしょうがないよ。また痛くなったら来てください。って言われて、結局手術になっちゃった」
このような訴えを、理学療法士として何度も何度も聞いてきました。
そのたびに、正直なところ、憤りに近い感情が湧きます。
医療が必要な状態とは、すでに体が壊れてしまった状態です。
つまり、医療が必要になってからでは遅いのです。
なぜ「また痛くなったら来てください」で終わってしまうのか。
なぜ、手術になる前にできることが、こんなにも見過ごされているのか。
病院勤務の理学療法士として感じてきた違和感と、そこから副業整体という働き方にたどり着いた理由を、今日はお話ししたいと思います。
「また痛くなったら来てください」という言葉の裏側
この言葉を、悪意で言っている医師は少ないと思います。
保険診療という枠組みの中では、外来の診察時間は限られていて、一人ひとりにじっくり向き合う時間は、そもそも確保されていません。
しかし、そうだとしても、患者様の側からすれば「また痛くなったら」の前に、できることはなかったのかと感じてしまいます。
痛みが再発するかどうかを、ただ待つしかないという状態は、患者様にとって不安なものです。
理学療法士として現場でその声を聞くたびに、この言葉の軽さと、その裏にある構造的な限界の両方を感じています。
一般的な整形外科で行われていること|ブロック注射・痛み止め・湿布
多くの整形外科では、痛みを訴えても、リハビリの処方がされないケースが少なくありません。
代わりに行われるのは、ブロック注射による一時的な処置や、痛み止めの薬、湿布の処方による自宅療養です。
これらは症状を一時的に抑える対症療法であり、痛みの根本原因にアプローチするものではありません。
もちろん急性期には必要な処置です。
しかし、それが数ヶ月、時には数年と続いていく中で、原因への介入がないまま時間だけが過ぎていく患者様を、私は何人も見てきました。
医療が必要になった時点で「すでに遅い」
医療が必要な状態とは、言い換えれば、体がすでに壊れてしまった状態です。
膝に水が溜まる、痛みで階段が登れない、こうした症状が出た時点で、実はその何年も前から、体には負担が蓄積されていたはずです。
つまり、症状が出てから病院に駆け込むという流れそのものが、すでに手遅れに近いタイミングだと言えます。
本当に必要なのは、症状が出る前の段階で、体の使い方や姿勢の崩れに気づき、介入することです。
しかし、そこに関われる仕組みは、今の医療現場にはほとんどありません。
「病院は営利組織である」という現実
厳しい言い方になりますが、病院も経営が成り立たなければ存続できない組織です。
そして診療報酬の仕組み上、短時間で多くの患者様を診ることが、経営上は合理的な選択になります。
予防のための丁寧なリハビリよりも、注射や投薬による対症療法の方が、回転率も収益性も高くなりやすいというのが現実です。
これは医師個人の資質の問題というより、医療制度そのものが持つ構造的な特徴です。
そのことを理解した上でなお、患者様にとって本当に必要なものとの間にズレがあると、私は感じています。
理学療法士として抱える「モヤモヤ」|予防に関われないもどかしさ
病院で働く理学療法士は、基本的に「すでに病気や怪我をした人」にしか関われません。
保険診療の枠組みの中では、症状が出る前の予防的な関わりは、業務の対象外になってしまうからです。
現場で患者様と向き合うたびに「もっと早く関われていたら」と感じる場面が、何度もありました。
原因にアプローチしたい、悪化する前に食い止めたい。
そう思っても、制度上、その手前の段階には手が届かない。
このもどかしさが、私の中でずっとくすぶっていました。
膝の痛みの背景にあるもの|炎症の原因・隣接関節・姿勢との関連
膝が痛い、水が溜まる、という症状には、必ず理由があります。
なぜその部分に炎症が起きているのか、なぜ膝に過剰なメカニカルストレスがかかっているのか、という視点です。
膝単体の問題として捉えるのではなく、隣接する股関節や足関節の可動性、そして全身の姿勢との関連まで見ていく必要があります。
例えば、足関節の硬さが膝への負担を増やしていたり、股関節の使い方の崩れが膝の位置をずらしていたりすることは、珍しくありません。
こうした視点は、短時間の外来診察の中では、なかなか扱いきれない領域です。
私自身の経験|35歳で腰を痛め、3日間立てなくなった話
理学療法士である私自身も、35歳の時に腰を痛め、3日間ほど立ち上がれなくなったことがあります。
冷や汗をかきながら、やっとの思いで整形外科を受診しました。
レントゲンを撮り、筋筋膜性腰痛(ぎっくり腰)の診断を受け、渡されたのは痛み止めの薬と湿布だけでした。
リハビリのある病院を選んで受診したはずなのに、結局、実質的には何もしてもらえなかったという感覚しか残りませんでした。
その後、1ヶ月ほど後遺症のような症状に悩まされ続けました。
この経験を通して、多くの患者様が同じ思いをしているのだと、身をもって実感しました。
「どこに行けば良くしてもらえるのかわからない」と話す患者様たち
理学療法士として関わる患者様の多くが「本当は手術はしたくなかった」と話します。
手術は体への負担が大きく、入院にかかる時間的・金銭的な負担も、決して小さくありません。
そして口を揃えるように「整形外科を何軒も回ったけど、どこも痛み止めと湿布ばかりだった」「どこに行けば良くしてもらえるのか、わからなかった」と話すのです。
これは特別な誰かの話ではなく、多くの人が同じように迷子になっているということだと感じています。
病院勤務と副業整体、両方に携わる理由
病気や怪我をしてしまった人を、医療の現場で支える。
同時に、予防的な視点を持って、症状が出る前の段階にも関わる。
私にとって、この両方に携わることが、副業整体を始めた大きなきっかけの一つでした。
病院の中だけでは、どうしても予防のための時間や仕組みが足りません。
だからこそ、その手前の部分を、整体師としての立場で補いたいと考えるようになりました。
予防に力を入れられる働き方という選択肢
「また痛くなったら来てください」で終わらせず、痛みの原因そのものに向き合う時間を持つこと。
これは、保険診療という枠組みの外だからこそ、可能になる働き方でもあります。
病院で医療に携わりながら、副業整体という形で予防的な関わりを持つ。
この働き方は、理学療法士として抱えてきたモヤモヤに対する、一つの現実的な答えだったと感じています。
まとめ
「また痛くなったら来てください」
この一言に込められているのは、決して悪意ではないのかもしれません。
保険診療という枠組みの中で、できることには限界があります。
それでも、手術する前にできることは、本当はたくさんあるはずです。
痛みの原因は何か。なぜその関節にメカニカルストレスがかかっているのか。隣接する関節や、全身の姿勢との関連は。
こうした視点に、じっくり向き合う時間は、病院の診察の中では、ほとんど与えられません。
私自身も、35歳で腰を痛めた時、「どこに行けば良くしてもらえるのか」がわからず、途方に暮れた経験があります。
病院で医療に携わりながら、予防的な視点を持って副業整体でも働く。
この両方に関わることが、私が副業整体を始めた理由の一つです。
同じような違和感を抱えている理学療法士の方に、この記事が何かのきっかけになれば嬉しいです。


