「この職場で、自分はもっと成長できるだろうか…」
理学療法士として5〜8年目を迎える頃、多くの人がこんな問いを抱えます。
技術は確実に上がっている。
患者さんからの信頼も積み上がっている。
それなのに、給料はほぼ横ばい。将来像も、なんとなく見えてしまっている。
私自身の転職は、職場への不満からではありませんでした。
人間関係も良好で、居心地のよい職場でした。
それでも踏み切ったのは、「自分の理学療法士としての価値は、臨床にある」という思いが強くあったからです。
勉強会で出会った講師の先生からお誘いをいただいたことが直接のきっかけでしたが、根底にあったのは「技術をもっととがらせたい」という純粋な欲求でした。
経済評論家・山崎元先生は、「自分の適職を選ぶ期限は28歳」と断言しています。
この言葉は、医療職にも、理学療法士にも、そのままあてはまります。
本記事では、なぜ20代のうちに「職」の選択が重要なのか、転職を経験した理学療法士14年目の私のリアルを交えながらお伝えします。
20代のキャリアに迷っている方に、一つの現実解として読んでもらえたら嬉しいです。
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【理学療法士の20代】「慣れ」と「迷い」が交差するキャリアの転換期
社会人になりたての頃は、右も左もわからない中で、がむしゃらに走り続けていたはずです。
勉強会に積極的に参加して、休日も自己研鑽に充てて、とにかく「もっと上手くなりたい」という一心で動いていた。
ところが5年、6年、7年と経験を積むうちに、状況が少しずつ変わってきます。
臨床業務はスムーズにこなせるようになる。
後輩の指導も任されるようになる。
職場の中での自分のポジションも、なんとなく定まってくる。
そのとき、ふと気づくのです。
「このまま同じことを続けていたら、5年後の自分が今と変わらないかもしれない。」
これは、決してネガティブなサインではありません。
むしろ、次のステージに進む準備が整い始めた「キャリアの転換期」が来たというサインです。
臨床経験を積んだからこそ見えてくる課題がある。
そして、その課題と向き合うためには、今いる環境の外に目を向ける必要が出てくる。
5〜8年目というタイミングは、そういう意味で理学療法士のキャリアにとって、非常に重要な時期なのです。
山崎元先生が示す「28歳の期限」とは何か
経済評論家・山崎元先生は、「人生100年時代のキャリア・プランニング」の中で、次のように述べています。
「自分の適職を見つける期限が28歳。理由は、ビジネスパーソンの能力的全盛期である30代前半を、仕事を覚えて迎えるためだ。」

この図を見ると、20代は「職の選択の試行錯誤期間」として位置づけられています。
28歳という年齢は、「この年齢を超えると、全く新しいことへの適応力が落ちてくる」という観点から導かれた、一つの目安です。
「28歳までに適職を選ぶ」というのは、つまり30代前半の能力的全盛期を、正しい場所で迎えるための準備を整えておくということ。
逆に言えば、28歳までは積極的に試行錯誤していい時期でもあります。
業界や職種をすっかり変えるような転職も、この年齢までであれば前向きに考えていい、と山崎先生は言っています。
これは理学療法士にも、そのまま当てはまる考え方です。
資格職だからこそ、「理学療法士である」という軸は変わらない。
しかし、どんな環境で、どんな患者さんと、どんな方法で関わるかという「職」の選択は、20代のうちに真剣に向き合うべきテーマです。
「今の職場でいいのか」という問いを先送りにしていると、気づいたときには30代半ばになっていた、ということが起こりやすいのです。
理学療法士が「職」を選ぶのが難しい3つの理由
とはいえ、理学療法士が「職」を主体的に選ぶのは、簡単ではありません。
その背景には、医療職特有の3つの事情があります。
① 資格があるからこそ「今の場所でいい」と思ってしまう
国家資格を持っているということは、一定の安定を保証してくれます。
求人はある。仕事はある。そうなると、「わざわざリスクを冒す必要があるのか」という心理が働きやすい。
資格という安心感が、逆に「現状維持」を選ばせてしまうことがあります。
② 病院という組織の中では、選択肢が見えにくい
病院に勤務していると、キャリアの選択肢は「この病院でどう昇格するか」に絞られがちです。
訪問リハ、自費リハ、フリーランス、副業、開業など、さまざまな働き方が存在しているにもかかわらず、日常の忙しさの中でそこに目が向きにくい。
外の世界を知る機会がないまま、気づいたら何年も同じ場所にいた、という理学療法士は少なくありません。
③ 「転職=キャリアダウン」という思い込み
医療業界では、転職に対してネガティブなイメージが根強く残っています。
「転職回数が多いと採用で不利になる」「一つの職場で長く続けることが美徳」という空気感が、特に病院という組織の中には存在します。
しかし現実には、転職によってより高い臨床環境を得て、自分の技術を大きく伸ばしている理学療法士も多くいます。
「転職がよい・悪い」の話ではなく、自分の成長にとって今の環境が最適かどうかを問い続けることが大切です。
私が5年目で転職に踏み切った理由と、踏み切れそうになかった理由
私が転職を決めたのは、理学療法士5年目のことでした。
当時の職場は、人間関係も良好で居心地のよい環境でした。
やさしい先輩や6人の同期職員、後輩たちにも恵まれ、患者さんからの信頼も少しずつ積み上がっていました。
それでも、心のどこかにずっと引っかかりがありました。
「今の自分は、臨床家として本当に成長できているのか…」
転機になったのは、勉強会への参加でした。
そこで出会った講師の先生と縁あってお誘いをいただいたのです。
その瞬間、自分の中で何かが決まりました。
「自分の理学療法士としての価値は、臨床にある。技術をとがらせるために、前に進もう。」
一方で、踏み切れなかった理由も正直に言えばありました。
居心地のよい職場を離れることへの不安。
人間関係を一から作り直すことへの面倒さ。
新しい環境でやっていけるかという自信のなさ。
それでも転職を選んだのは、「今の環境で安心していることと、成長することは、必ずしも同じではない」という気づきがあったからです。
転職後、臨床の環境は大きく変わりました。
求められるレベルが上がり、自分の技術が試される機会も増えました。
その経験は、間違いなく今の自分の土台になっています。
▶関連記事:【まずは副業よりも転職を!】理学療法士が給料UPを狙うための転職サイトの使い方
転職で変わったこと・変わらなかったこと|理学療法士のリアル
転職して実感したことを、正直にお伝えします。
変わったこと【臨床の密度が上がった】
新しい職場では、より専門性の高い症例に関わる機会が増えました。
周囲のセラピストのレベルも高く、日々の臨床が自己研鑽の場になっていました。
「環境が人を育てる」という言葉を、転職して初めて体感しました。
変わったこと【患者さんとの関わり方が変わった】
前の職場では「この患者さんはこういう人」という先入観が、少しずつ積み上がっていました。
新しい職場では、まっさらな目で患者さんと向き合うことができた。
その新鮮さが、臨床のモチベーションを大きく上げてくれました。
変わったこと【年収がアップした】
転職によって、前職場と比較して年収が約60万円アップしました。
資格も技術も変わらない。変わったのは、職場だけ。それだけで、これほど収入に差が出るのかと、正直驚きました。
給料面に不満を感じているなら、転職はベースアップの現実的な手段になり得ます。
▶関連記事:【まずは副業よりも転職を!】理学療法士が給料UPを狙うための転職サイトの使い方
変わらなかったこと【技術が給料に直結しないという構造】
これは正直、転職しても変わりませんでした。
どれだけ臨床力を磨いても、病院という組織の中では、給与は年功序列と診療報酬の枠の中で決まります。
患者さんから「あなたに診てもらってよかった」と言われても、それが給料の数字には反映されない。
この構造的な問題は、職場を変えても解決しませんでした。
それが、後に「副業整体」という選択肢を真剣に考え始めるきっかけになっていきます。
▶関連記事:技術を磨いても給料は上がらない|病院で評価されない理由と副業整体という選択肢
20代の理学療法士が「職」を選ぶ前にやっておくべきこと3つ
転職するかどうかに関わらず、20代のうちにやっておいてほしいことが3つあります。
① キャリアの棚卸しをする
自分がこれまでどんな症例を経験してきたか、どんな場面でやりがいを感じたか、他人から評価されたことは何か。
一度紙に書き出してみてください。
自分では当たり前だと思っていたことが、実は強みだったということに気づくはずです。それが、今後のキャリアを選ぶうえでの地図になります。
② 外の世界を積極的に見に行く
勉強会、学会、SNS、同期との情報交換。
今の職場の外を見ることで、「こんな働き方があるのか」「こんな臨床環境があるのか」という発見が積み重なります。
私自身、勉強会への参加が転職のきっかけになりました。
外に出ることが、選択肢を広げる最初の一歩になります。
今すぐ動くつもりがなくても、種をまいておくことに意味があります。
③ ライフスタイルから逆算して考える
「どんな理学療法士になりたいか」と同じくらい大切なのが、「どんな人生を送りたいか」という問いです。
家族との時間、収入の水準、働く場所、休日の使い方。
ライフスタイルの理想像から逆算すると、自分に合ったキャリアの方向性が見えてきます。
仕事だけでなく、人生全体を設計する視点を持っておくと、20代の選択がより確かなものになります。
「28歳の期限」を過ぎてしまったらもう遅いのか?
ここまで読んで、「自分はもう28歳を過ぎてしまった…」と感じた方もいるかもしれません。
結論から言えば、遅くはありません。
山崎先生の言う「28歳の期限」は、「それ以降は何もできない」という意味ではありません。
「能力的全盛期を正しい場所で迎えるための、一つの目安」という意味です。
30代になっても、職を見直すことはできます。
転職することもできます。
副業を始めることもできます。
ただし、30代以降のキャリアには「人材価値を確立する」という新しいテーマが加わります。
20代が「職を選ぶ試行錯誤の時期」なら、30代は「自分の人材価値を確立し、それを経済的に回収していく時期」です。
この30代のキャリア戦略については、次の記事で詳しく書いていきます。
▶関連記事:理学療法士30代のキャリア|病院評価に頼らず「人材価値」を確立する方法
まとめ
理学療法士の20代は、「慣れ」と「迷い」が同時にやってくる時期です。
技術も経験も積み上がっているのに、「このままでいいのか」という問いが消えない。
それは、あなたの感覚がおかしいのではなく、次のステップに進む準備が整い始めたサインだと私は思っています。
山崎元先生が言う「28歳という期限」は、脅しではありません。
能力が最も伸びる30代前半を、自分の選んだ「職」で迎えるためのタイムラインです。
私自身は、5年目の転職でその感覚を初めて掴みました。
しかし転職しても、「技術が給料に反映されない構造」は変わりませんでした。
それが、後に副業整体という選択肢を考え始めるきっかけになります。
20代のキャリアは、人生100年時代の最初の布石です。
焦る必要はありません。
ただ、目を背ける必要もありません。
次の記事では、30代の理学療法士が「人材価値」をどう確立するかをテーマに、副業整体という選択肢も含めて話していきます。
▶関連記事:理学療法士30代のキャリア|病院評価に頼らず「人材価値」を確立する方法

