「初回対応が苦手で、何を話していいか分からない」
「技術には自信があるけれど、最初の印象で損をしている気がする」
「患者さんと最初から良い関係性を作りたい」
そんな悩みを抱えているリハビリ職の方は多いのではないでしょうか?
実は、リハビリ職にとっての“接客力”は、技術力と同じくらい大切です。
なぜなら、患者さんがあなたに信頼を寄せるかどうかは、最初の3分でほぼ決まってしまうからです。
どれほど専門的な知識を持っていても、「この人なら任せても大丈夫」と感じてもらえなければ、良いリハビリ関係は築けません。
本記事では、理学療法士として14年間臨床に携わり、接客力を磨いた経験から得た「第一印象で信頼を得るための具体的なコツ」をお伝えします。
今日から現場で実践できるポイントばかりですので、ぜひ参考にしてください。
【なぜ初回対応がリハビリ職にとって重要なのか】

【技術よりも先に“印象”で評価される】
リハビリは、まさに「人対人」の仕事です。
どれほど高い技術を持っていても、初回の印象が悪ければ、その後の説明や治療方針を信頼してもらうことは難しくなります。
心理学ではこれを「初頭効果」と呼び、最初の3分で形成された印象がその後の関係に長く影響するといわれています。
つまり、第一印象は信頼関係を築くための“最初の関門”であり、技術以前に意識すべき重要な要素なのです。
いくら施術が上手くても、信頼関係が築けなければ、その成果は半減してしまいます。
【リハビリ職は技術職であり接客業でもある】
リハビリ職は医療従事者であると同時に、“接客業”でもあります。
患者さんに「安心」と「信頼」を感じていただくためには、技術力だけでなく、接し方そのものも重要な要素です。
しかし実際には、多くのリハビリ職が技術の研鑽に時間をかける一方で、「接客」について学ぶ機会はほとんどありません。
これは、私の周囲に限らず、業界全体に共通する課題だと感じています。
まずは、「自分たちは接客業でもある」という意識を持つことが第一歩です。
その意識が芽生えるだけで、言葉遣いや立ち振る舞いが自然と変わり、患者さんとの信頼関係もより深まっていきます。
【第一印象を良くする3つのポイント】

【①表情|笑顔は最大の信頼ツール】
笑顔は、最も簡単でありながら、最も効果的な“接客スキル”です。
緊張している患者さんの心をほぐし、「この人になら任せても大丈夫」という安心感を与える力があります。
特に初対面の患者さんに対しては、口角を少し上げ、目元をやわらかくすることを意識してみましょう。
作り笑いにならないようにするには、「あなたを受け入れています」という気持ちを込めることが大切です。
ちなみに私自身も、もともと笑顔が得意ではありません。
だからこそ、“鏡を見たら笑顔になる”という習慣をつくり、自然な表情づくりを日々意識しています。
【②声のトーン|落ち着いた低めの声で】
声のトーンは、相手に与える印象を大きく左右します。
焦っていたり疲れていたりすると、声が上ずったり早口になったりして、知らず知らずのうちに信頼感を損ねてしまうことがあります。
意識して“少し低めのトーン”で、“ゆっくり話す”だけでも、落ち着きと自信が伝わります。
特に高齢の方に対しては、声が高すぎると聞き取りにくくなるため、相手の反応を確認しながら、落ち着いたペースで話すことが大切です。
落ち着いた声は、それだけで安心感や信頼感につながります。
【③姿勢|“聴く姿勢”が印象を変える】
姿勢は、言葉以上に相手への気持ちを伝える要素です。
患者さんの目線より少し低い位置で、しっかりと目を見て話す。そして、うなずきや相づちを交えながら「きちんと聴いています」という姿勢を示しましょう。
それだけで、患者さんは「この人は自分の話を大切に聞いてくれる」と感じ、安心して心を開いてくれます。
反対に、上の空だったり、パソコンを操作しながら話したりするのはNGです。
「私はあなたを尊重しています」という気持ちを態度で伝えることが何より大切です。
“向き合う姿勢”こそ、最高の接客マナーだと私は考えています。
【患者さんとの距離を縮める会話術】

【質問+共感で関係を築く】
リハビリ初日の患者さんは、多くの場合、不安でいっぱいです。
そんなときこそ効果的なのが、「質問+共感」のコミュニケーションです。
たとえば、事前にカルテなどで患者さんの情報を確認し、状況に合わせて声をかけてみましょう。
術後間もない方には「まだ痛みが辛そうですね」
骨折などで急な入院をされた方には「急に入院になって大変でしたね」
といった言葉がけをします。
こうした“気遣いの質問”や“共感の言葉”は、相手の心に突き刺さります。
つまり、「私はあなたのことを理解していますよ」というメッセージを自然に伝えることができるのです。
さらに、「そうなんですね」「それは大変でしたね」といった共感的なあいづちを添えることで、患者さんの安心感はぐっと高まり、信頼関係の構築にもつながります。
【専門用語を使わず、やさしく説明する】
リハビリ職がつい陥りがちなのが、「説明しすぎ」と「難しい言葉の多用」です。
専門用語を並べるよりも、簡単で直感的に理解できる言葉で、患者さんの生活に置き換えて説明することが大切です。
たとえば、
「この筋肉が弱っているから、階段を上るときに膝がガクッとするんです」
「この筋肉が硬いから、洗濯物を干すときに肩が上がりにくいんですね」
といった具体的な説明にすると、患者さんは自分の体の状態をすぐにイメージできます。
難しい言葉で“説明する”ことよりも、患者さんに“理解してもらう”こと。
それこそが、信頼関係を育てる第一歩です。
【初回対応が上手い人に共通する習慣】

【準備が早い人は印象が良い】
実は、挨拶をする前から勝負は始まっています。
カルテを事前に確認し、名前や年齢、既往歴、手術歴などの基本情報を頭に入れておくことで、患者さんに「この人は自分のことを理解してくれている」と感じてもらえます。
その“準備の早さ”が、安心感と信頼感を生み出します。
準備とは単なる下調べではなく、患者さんへの思いやりの表れでもあるのです。
【感情のコントロールができる】
どんなに忙しい日でも、疲れや苛立ちを表に出さないことがプロとしての基本です。
患者さんはセラピストの表情や声のトーンから、無意識にその日の気分を感じ取ります。
たとえ内心が慌ただしくても、落ち着いた表情と穏やかな対応を心がけることで、患者さんは安心して身を任せられます。
安定した感情表現=安心感の提供なのです。
【「相手中心」で考えるクセがある】
優れたリハビリ職ほど、「自分がどう見られるか」ではなく、「患者さんがどう感じるか」に意識を向けています。
施術の一つひとつ、声のトーン、説明の仕方など、すべてを“相手の立場”で考える姿勢が信頼を生みます。
この「相手中心の視点」を持ち続けることこそ、患者さんとの関係を長く良好に保ち、結果的に成果を高める最大の要因となるのです。
【まとめ|初回対応はリハビリの最重要事項】

リハビリの第一歩は、評価や施術ではなく、“人と人との信頼づくり”です。
初回対応を丁寧に行うことで、患者さんは安心し、指導や運動にも前向きに取り組めるようになります。
✅表情・声・姿勢を整える
✅共感と質問を意識した会話をする
✅準備と感情のコントロールを怠らない
これらを意識するだけで、患者さんとの距離はぐっと縮まり、リハビリの成果も確実に高まります。
あなたの「接客力」が、患者さんにとっての“希望の第一歩”になるかもしれません。
明日の1人目の患者さんに、ぜひ笑顔で「おはようございます」と伝えてみてください。
それが、最高のリハビリの始まりです。

